hurui mono wo matomete mita

唇の裏側の意図、其れに固執して終う。 擾乱するスクランブル交差点に蔓延する仮面は虚構の莞爾のみ。
だらりだらり、葉緑体の緑が目を引く掌の茎、コンクリィトを咀嚼する。
ぎらりぎらり、無機質なスチール球体はひもねす管窺、充血させども意味は無し。
地面しか映らぬ故の傴僂、背に負うものなど手のひらには疾うに無く、螺子は脳髄の歯車と化し。
笑顔笑顔笑顔、引き攣る唇、其の末端。線路と樹木、頭蓋から為るコラージュは酷く不出来。
模倣模倣模倣、後引く足跡、彼の羅列。盛者は愚者に、隊列微微も乱さずパラシュートは落下経過。
続く営み其の愚かしさ、織り成す虚構其の白濁さ。愚行を切断イコール余剰数字の足切りなら、剃刀を当てた手首も報われる。
生存は、即ち腐敗。糜爛が咽に食い込んで意識を伝える術を亡くす前に、サァサァお手を拝借!


童話創造過程に於ける羊皮紙の灰燼は廃人のための甘い毒であるのも、帰趨を見ずに病める魂の安楽さ故。 吾等、驕奢だからこそ自己の形成した紙屑たちに咽笛を噛み千切られる定めに有。 中途で落ちる架け橋の先で、空中ブランコの道化を演じ欺き隠蔽し、落下する掌で蹂躙遊戯。 要塞都市の此の場所は垂涎する獣より獰猛。
パイプの先を掴もうと足掻く指先は剥れた肉叢。
ネオンサインは眼球を喰らう為に在るから視線を投擲するには好相性。
プラスチックの奥底で炯眼はぎらぎらと無垢を嘲笑。
サァカス小屋の物見は憂世と同意と気付きしは慈母か或は謀叛者。


しにたい、という思考は心中を汚濁へと攪拌せしめるナイフのような物である。
いきたい、という瞑想は躯幹に降り止まぬ湿気を孕んだ催花雨の如き物である。
ナイフが貫通するのは余韻を渇望する鼓動であり、催花雨が促成するのは死の刹那に他ならぬ。
煢独を忌むに起因など無用である如く。何故なら始祖より定めし呪詛に他ならぬものだから。
定めた原罪、紅波の果実、齧るは背徳。タナトスは背後で抱擁、メティスは下瞰し嘲笑。
蝉時雨こそ人間の美徳を夏の糜爛と共に具体しているから、夏の盛りに死の衝動に指嗾されるのだ。


気が付けば死ばかりを吹聴するのは正しく此の口で或。悪意と殺意を孕んだ風ばかりが頬を愛撫する。 利潤を渇望し続けた物者の代価に私たちが背負うのは枯渇だけ。アア頽廃のみ生きとし生ける心臓を欲す。
枯らせて仕舞え、
喰らって御終い、
千切っておやり。
縋る希望などいらぬ、そんな陳腐は要り様無い物。飽和したのは物に留まらず其の触手は精神をも犯すのだ、ああ希望など誰が最初に口にしたか。 ああ誰が最初に其れを求めたか、全て還るのは自身だけ、他者など存在しない。
世界は孤高、周囲は狐疑に充塞している。一人善がりは一人に温和。だって結局どこにも入り込む余地なんて無いだろう。 殺意を抱くには水中の影で事足りる如く、尖鋭なる刃の矛先は吾が胸内であろう。 生まれ出でてから生命は常々終焉ばかりに偏愛を注いでいたことに全て説明が付くように、さァ終れば善い。


悪辣な物たちばかりが蜜壺を嘗め回す。密にあり付けない弱者達は身を寄せ合い其の中で生まれる格差に対抗する為に唯一与えられた脆弱な引鉄ばかり落し続ける白痴を演技。
薬莢が飛ぶ度に己の魂をすり減らすことにさえ気づかない人は愚鈍であり、可哀相な位しあわせなのでありませう? 物と富ばかりが飽和して己の咽を喰らい潰そうと垂涎していることに気づき身を護るも、所詮は己以外の何物かの後始末に汚されてこの身は朽ちる。
蹌踉として帰路を探すも大切な物が何か必要な物は何かを忘れて所詮は本末転倒に陥る。
アア気をつけてホラ眼下に迫り来る。
君達が脆弱な刃で切り裂いてきた死霊の群れが窪んだ眼窩に嵌める硝子球を求めるのだから。
アアほら所詮は共食いの世でしか無い。
我々に手段をキリストは与えなかったから。


溜息の色は常に白い。思えば人が嫌いなのではなく意識を嫌悪している様である。
魂の在り処を心か脳かと論議し大罪人の首を刎ねた非人道な彼の思いは正しく其れか。意識を持たざる生命はつまり肉の詰め物であり、それを畏怖している訳ではない。
私の嫌悪の対象は魂其の物だ。
(自我を厭う、意識を嫌う。感情を廃棄すべきと説く、思想を打破すべきと論じる。嗚呼、個体を厭うてはおらぬ、私は思いに病んでいるのだ。ああ、人間嫌いを悟るには十分)
好い加減諦めをつければ良いのかも知れぬと心中で呟きこそすれ、やはり恐れているのだ。群がる肉塊の群れ群れ!視線の矛先をどなたの心臓にすべきか!笑顔を撒いてはいても他人に嫌悪感を抱く己こそ嫌悪すべき物であると理屈では説ける。 現実と理想と思考と視界と信ずるのは何が宜しいか。 誰も彼も信用には足りぬ。まだまだ足りぬ。どれ程積み重ねても足りない。己さえ信じられぬのに誰を信じればよいのか。信仰こそ生命を維持する為に必要不可欠だ。神さえ信じられなくなったときに生命は尽きるのであろう。
嗚呼、安楽を纏いし終焉は何処にあるか。(己を虚構と妄信すれば安楽であるのやもしれぬぞ!)



inserted by FC2 system